養護学校の進路研修会−その4−

どんどん行くよっ!(他の優先順位の高い仕事は放置して…)


さて5件の事例紹介のあと、在宅で自立支援ハウスへ通っている卒業生の写真とコメントだけの紹介が簡単にあり(本人不在だった)前半は終了。
本当は質疑応答の時間がとってあったのだが誰も質問する人はいなく、ひとまず休憩。実際これだけ様々な事例を紹介されると聞いてるだけでも疲れるよ…


この後は5件の事例それぞれのグループの部屋にわかれ、「進路を考えるフリートーク」の部となる。私は全く当事者ではないのだが、保護者のみなさんはリアルな事例紹介を立て続けに聞かされちょっとした興奮状態のようであった。事例は「がんばっている先輩」として選ばれた5人のものであるから、「いいね、いいね、そんなのいいね」といった具合で夢も希望もありそうだ。しかし私は「それが現実の全てなのだろうか…」と、つい思ってしまう。N君の例にしても、単純なことを言えばウチのパン屋ではこれ以上の障がい者雇用は無理だ。誰かやめるのなら別だけど…
いったい何人の保護者がどういった希望と疑問を持って集まってくるのだろう。安直に「いいね、いいね」と現実離れした夢と希望に侵されている保護者がいたとしたら、ここはシビアに現実はこうなんだよ、という話をしなければいけない。私はそのためにここに来たんだ!と妙な使命感に燃え始めていた。やばいぞ母ちゃん、暴走するでないぞ!


とかなんとか考えながら講師席に座って待っていると、ちらほらと保護者が集まりだし15名ぐらいの車座ができあがった。進行役のPTAの人とサポートする先生、在校生2名も混じっていた。
事前の打ち合わせのときに先生から「N君の話を聞きたいというリクエストが大変多いんですよ」と聞かされていたので、案外少ないじゃん、といのが正直な印象だった。もっとも我が子が高等部を卒業したらぜひとも一般就労させたい、という人たちが全体の中でどれだけの割合なのかということもある。案外少ないと感じたのは、つまりそれだけ「就労」とは厳しいものだという認識が保護者のみなさんにはある、ということで逆に私を安心させた。
ウチのNPOの主旨からすると、こういう私の感覚自体おかしいのかもしれないが…実社会で働くことのハードルを少しでも低くするためのNPOであるはずなのに。


フリートークの時間は50分とってあり、簡単な自己紹介のあと「何か質問とかある方」と進行役が促した。しかしこういうときに先陣をきって「はいっ!」と手を挙げる人などまずいないのがT山県だ。ぐるり見渡しても誰も何も言い出す気配がなかったので「では、私から最初に言わせてください」とズケズケと。だって時間がもったいないんだよ
「はい、どうぞ」ということで、まとまらない頭のままにそのとき思っていたモヤモヤをはきだすように早口でしゃべり始めた。


まず、5件の事例の中でウチの事例は他とは全く違っているということの念押し。まずもってウチはただの町のパン屋さんなのである。二つ目の事例も「企業就労」ということであるが、就労先は障害者福祉センターであり、まわりの理解やサポートも手厚そう。残りの3件は福祉施設なので、スタッフは第一に本人のことを考えている。ウチはまず第一に考えるのはパンの売上げなのである。パンが売れないことには、従業員(障がい者も含む)にお給料が払えない。あらかじめ先生から手渡された「聞きたいことリスト」に「お給料は上がるのですか?」とあったけど、「これは私の悲願です。なぜなら、そのお給料というのは私のお給料のことでもあるので」と、訴えた。私のセツセツとした訴えがリアルだったせいか、車座の参加者はいちいち深くうなづいている。


さらに「先ほどN君は辛いことはない、と言ってましたが、そんなはずはありません。彼なりに辛いこともあるはずなんです。ねぇ〜」と、促してもN君は相変わらずちょっと困ったような顔でニコニコするだけ。お母さんが「遠慮せんと言ってみられ」と促してもダメ。「店長がキツイとか、いろいろあるやろぉ」と振ってみてもだんまり。
なので、私の方から補足の意味で、「ウチの職場はけっこう時間に追われる職場なんです」と説明。「N君は指示したことはキチンと理解できるのですが、実行するのに時間がかかるタイプなので、いつもせかされています。それはけっこう本人のストレスになっていると思うのです」
参加者一同、コクコクとうなづいている。
なんとなく、私のもやもやっと思っていることの理解を得られたような気がしたので、とりあえずその辺でいったん発言はストップ。


まだまだ続く…