養護学校の進路研修会−その2−

多少の居心地の悪さを覚えつつも、N君の事例紹介は終了。これが口切の紹介で、この後4件の紹介が続く。2件目も企業就労の事例ということであったが、就職先は障害者福祉センター。そこのお風呂(けっこう広い)掃除を一人で担っているというA君の紹介であった。
A君も卒業後の就職先が見つからず、地元の障害者福祉センターへ相談に通っているうちに「それじゃここで働けば」ということになったらしい。彼は家でも家族の食器洗いをするなど、ピカピカにすることが大好きなようである。さらに、子どもの頃から水遊びも好きだったとか… (^^;
職場が障害者福祉センターであることから、周りの理解や支援が厚いであろうことは容易に想像がつく。広いお風呂場を2時間かけてピカピカにし、完了すれば自分で指差し確認。その後、脱衣場も掃除。最後に職員に再点検してもらい作業終了。N君とは対照的にとにかく声が大きくて元気。まっすぐ前を見て、なんでも取り繕わずに大きな声で答えては場を和ませる。本人が意識せずに廻りの人に可愛がられやすいキャラクターだなぁと感じた。
しかしその分、一般社会で生活するうえでの「社会性」という面ではN君の方が身についている感じがした。
そもそも、お風呂掃除が「仕事」であるということの意識が彼にはあるのかないのか疑問。2時間かけてピカピカになることへの達成感みたいなものはあるのだろう。また職員や利用者からほめられたり、労われたりするのも嬉しく感じるだろう。しかし「仕事」であるということは責任も問われるし、辛いこともあるはずだ。一般社会でいうところの「仕事」とはそういうもので、それを成すことにより報酬が得られるのだ。


とか、ぐだぐだ考えているのはたぶん私だけで、会場はまたもや「いいね、いいね、そんなのいいね」という空気で満ち溢れている。親御さんも現状に満足してニコニコとしておられる。それはそれでいいことなのだが、やはり私の漠然とした疑問は消えない。


余談だが、後でM本さんに一切合切報告すると「それは明石さんみたいですね」とのこと
明石さんとは川崎市役所に勤めている、あの「明石徹之さん」のことだとピンときた。この業界では有名な人なので
お母さんの著書もけっこう売れている。
http://www.budousha.co.jp/booklist/book/oshigoto.htm


養護学校にはさまざな生徒がいる。卒業後の生活もさまざまだ。できることをたくさん持っていて企業就労を目指す子もいれば、自分の意思表示もママならない子もいる。残りの3件の事例紹介は作業所・施設に通って「がんばっている先輩」たちのことだった。企業就労は困難であろうことは見てとれるが、地域の人たちや、作業所・施設の職員さんたちに支えられ、豊かな日常生活を「がんばっている先輩」たちだ。
私たちのNPOで就労の場を確保しようとしている人たちとは、層が違う人たちがたくさんいるんだな…と、見ていなかった現実に初めてふれた気がした。


続く(たぶん)