メイトにのぞむこと

私の願いは次の3つだ


わからないことは「わかりません」と言う
できないことは「できません」と言う
指示された作業が終わったら「終わりました」と言う


たったそれだけ


でも、たったこれだけのことが難しい。
彼らには強い意志表示ということがなかなかできない。
「わかった」ことと「わからない」ことの区別がつきにくい。
そもそも「わかった!」というストンと腑に落ちる感覚というのはあるのだろうか?
「これを、こうしてください」と指示を出せば、簡単に「わかりました」と答える。
でも、すました顔で違ったことをやってしまう。
別にすましているわけでもないのだろうけど、忙しい職場においては「すました顔して、とんちんかんなことをしている」という風に受け取ってしまう。
最近は、メイトの表情や仕事へ取り掛かる様子、素早かったりのっそりしてたり、自信に満ち溢れていたり、目が泳いでいたり、という微妙な雰囲気を見て「これは、わかってやっている」「指示の内容を充分把握していないな」という判断がちょっぴりつくようにはなってきた。
でも、本人や見守っている周りのものが「わかっていない」ことがピンと来る場合はいい。
「わかったの?」「よくわかりません」「じゃぁ、もう1回言うね」と、もう少し丁寧に説明してあげることができる。
やっかいなのは、よくわかっていない、あるいは取り違えているのに本人が「わかった」つもりになっている場合。
自信満々に全然違ったことを行い、スタッフもそれを見過ごしてしまう、という場合が時々ある。
スタッフは指示を出した後のメイトの様子を一部始終監視しているわけではないのだから。


「わからなくてできない」という場合の他に、「わかっているけれどできない」という場合がある。
その人の持っている能力にもよるが、数がからむものであったり(カウントや簡単な足し算、引き算)、手先を使う仕事、たとえばハサミやカッターを使うこと、重いものを持つこと、他の人とコミュニケーションをとる必要があること、そして未体験のこと、などなど


「できません」といって、叱られた体験があれば、なかなかそれを言うことはできない。
でもここでは「できない」ことはきちんと「できない」と言ってほしい。
「できない」のであれば、その原因をいっしょに考えて「できる」ように仕向けていきたいのだ。「できない」から「やらせない」のでなく。そして「できない結果」を見せられる前に自己申告をしてほしい。


メイトは仕事を手渡されて、呆然とたたずんでいることがある。
すると必ずスタッフからの激しいツッコミがある
「どうしたの?わからないの?できないの?」
忙しい職場で放たれる言葉はいつもストレートだ
心優しい人なら、この言い様を聞いただけで心が痛むかもしれない。
でもメイトの方は慣れてきている。
「わかる」と「わからない」の区別より自分で「できる」ことと「できない」ことの区別は簡単だから、だんだんと「できません」という言葉は自分で言うようになってくれた。それでも、スタッフが「どうしたの?」と促さないとなかなか言うことができない。


そして、みっつめの「終わりました」
メイトに出す指示のひとつひとつは簡単(私たちにとっては)なことである。
なので、できれば「あれをしたら、これをして、終わったらそれしてね」というふうにいくつかの仕事をまとめて言ってしまいたい(特に関連しあった連続した作業ならなおのこと)。
でも、ひとつひとつは簡単でも3つも続けて言われたら、メイトは混乱してしまう。全部ごっちゃになってしまったり、一つ目だけが頭にのこったり、あるいは最後に言われたことから取り掛かったり(作業の順番が重要な場合もあるのに)。
なので指示の出し方は細切れになってしまいがち。
やってほしいことはスタッフの胸のうちにストックされていくことになる。
指示した簡単な仕事は、メイトそれぞれの特性によって、手早く片付けることができる人もいれば、時間がかかる人もいる。
もちろん手早い割には雑だったり、勘違いしている場合もあれば、時間がかかっても完璧にしあがっている場合もある。作業内容により、メイトの能力により、指示の出し方により、気分によりさまざまだ。
だからこそ、終わったら、終わったと思ったら、ただちに「終わりました」と言ってほしい。
スタッフは作業結果のチェックをして、間違いがあればただし、次の作業の指示を出さなければいけない。よどみなく作業を遂行するためには、ひとつひとつの簡単な作業の連続を、滞ることなく先へ先へと進めていく必要がある。


なのに「終わりました」の報告がなかなか言えない。
「終わった」という区切りがなかなかつけられないのだ。
自分の作業が終わっても、隣で別の作業をしているメイトの仕事になだれていったり、勝手に仕事をみつけてそれを始めたり、机の上のものをあっちへずらしたり、こっちへずらしたりしてみたり
なんにもしないで、ぼぉっとしていることもよくある。
私たちスタッフはそういう様子を視界のハシで確認しながら
「いつになったら『終わりました』と言ってくれるんだろう」と
ジリジリ待つことになる。


わからないことは「わかりません」
できないことは「できません」
指示された作業が終わったら「終わりました」


このみっつを私たちにキチンと伝えてくれたなら
仕事をなかなか覚えることができなくても、
できることが少なくても、たとえ作業が遅くても、
もう少し上手にメイトさん達とやっていけるのに…
と、思ってしまうのだけど
それって、やっぱり難しいことなのか