最低賃金適用除外申請−その3−

その1
その2


申請してからは、わりにあっけなかった。調査も終わってみれば、あんなに身構えることもなかったなぁ、というカンジだし、数日後に電話で簡単に認可されたことを伝えられた。


それよりも、申請する際にどんな理由付けをして、いくらまで引き下げるのか?ということを決めるまでが大変でありました。我がNPOにおいては、設立前からパン屋を運営する計画は折込済みで事業計画や予算書にも盛り込んで設立申請を行った。その予算書の収支には賃金の項目もあげられていて、健常者何名×いくら、障がい者何名×いくら、といった風にすでに予算だてがなされている。最低賃金を下回る賃金で雇用することは、フツウに考えてあたりまえで当然、といった扱いである。私なぞは、身内に障がい者がいるわけでもなく福祉に関しては全くシロウト。障がい者を雇用するということは、そういうことなのかなぁ、と漠然と。


最低賃金適用除外申請のことも、「こういう手続きがあるからやっとけよ」みたいに理事から言われて初めて知った。最初は予算だてにあった障がい者の賃金に何の疑問も持っていなかった。健常者ほどの働きは期待できないのはわかっていたし…
むしろ、「ろくに働けない障がい者に、まともな賃金が出せるか」という考えの企業人がいるとしたら、「まともな働きは期待できなくても、できることはある。一人分働らけなくても二人で一人分と考えて、賃金も半分でいいから雇用してください。」と説得できるかもしれない。
それに、健常者と障がい者が同じ職場で働くとして、あきらかにできることの質や量が違っていたとしたら、そして賃金が同じだとしたら、今度は健常者の方がそんな職場で働くことがバカバカしくなってくるかもしれない。
よっぽど儲かっている大企業ならいざ知らず、いろんな経費をシビアに考えて人を雇用している企業であれば、最低賃金を保証してまで障がい者を雇おうという雇用主はいないだろう。世の中、キレイごとばっかりでは済まないのだ。


で、最低賃金適用除外申請の書類を作ろうと思っていた矢先に神戸の作業所で低賃金で障がい者に作業をさせていたのは違法、とかなんとかいうニュースが流れてきた。しかもそれは一般市民にとって、わりとセンセーショナルなことであった。


時期は2月のおしまい頃で、もうすぐパン屋が開店するこという頃。しかも、ウチのNPOのことが新聞やテレビで取り上げられ「障がい者雇用」ということが大々的に報じられた直後のことであった。
私としてはヒジョウに複雑な心境。100円台というのは、賃金としてはいかにも安い。しかし「作業所」というレベルで考えれば、ありがちな金額でもあるらしい。ウチの場合は「作業所」ではなく、あくまでも働く場である。世の中の人は障がい者の賃金はいくらぐらいであれば納得するのだろうか?世の中の人全部が納得する金額というのはありえないとは思うものの、寄付金を募ったり、メディアで取り上げられたりということが増えてくると、少し慎重な気分になってきた。


あらかじめ決めてあった賃金は、収支計画から追いかけて決めた額ではなかったのか?あの金額で妥当なのか?収支が破綻するのは避けたいが、収支が見合うからといって、その金額まで落とすというのはなんだか本末転倒ではないか…また、申請するに際して労働基準監督署が納得する根拠がある金額でないといけない。
と、いうことで時給額に関して再度検討しなおし、と相成った。(というか、私が騒いだからだけど…)


まず、ウチのNPOのスタンスとしては「障がい者の雇用の場の創出」が目的ではあるが、しょせんNPO。一般企業ほどもうかるわけではない。障がい者に払える賃金としては、「作業所」よりは上、でも「企業」ほどは出せない。その中間である。ここは重要な押さえどころである。「作業所」と「企業」の間の存在。そして障がい者には障害年金がある。(これに関しては勉強中)なので、労働で得られる賃金が健常者よりも少なかったとしても年金と合算して生活できるレベルであればヨシとする。あとは、その人の尊厳に関わる問題でもあり、いろいろ議論した結果、当初予定よりは50円を上積みした金額で決定。上積みした以上は、その分もさらに儲ける必要が出てくるわけで、結局は言い出した自分のクビをしめたことになるのであった。とほほ